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尿崩症

  • 疾患分類

尿崩症は抗利尿ホルモン(ADH)の分泌不全もしくは作用不全により発症する。前者は間脳下垂体領域の不可逆的障害が原因とされ中枢性尿崩症、後者はADHの作用部位である腎臓での異常のため腎性尿崩症と呼ばれる。

  • 診療/治療ガイドライン

・中枢性尿崩症:バゾプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)の診断と治療の手引き

http://rhhd.info/pdf/001015.pdf

・腎性尿崩症:なし

 

  • 疾患疫学(罹患率と予後)

・1999年の厚生労働省の全国調査では中枢性尿崩症の患者数は4700人であり、中枢性尿崩症の治療に使用する薬剤の消費量から推定した患者数は6200人(2006年)である。実際には更に増加していると考えられる。

・腎性尿崩症に関しては詳細な疫学データはなく本邦における患者数は不明である。

・なお尿崩症は高度な脱水にならずに治療介入が行われれば予後は良好である。

 

  • 分類・原因

・尿崩症の原因は、表1に示す。

・従来は特発性の頻度が高かったが、画像検査の進歩により炎症・肉芽腫性病変の関与する病態の割合が増加している。

・先天性腎性尿崩症は、X連鎖性劣性遺伝を呈する尿細管細胞のADHの2型受容体の遺伝子異常が大半を占める。

・続発性腎性尿崩症は、リチウム製剤によるものが最も多い。他にシスプラチンなどの抗癌剤や高カルシウム血症が原因となることがある。

中枢性尿崩症

腎性尿崩症

続発性(約60%程度)

 頭部外傷:脳出血 外傷・下垂体手術

 腫瘍:胚細胞腫 頭蓋咽頭腫 奇形腫

 下垂体腺腫 転移性腫瘍 白血病 リンパ腫

 肉芽腫:サルコイドーシス

     ランゲルハンス細胞組織球症

 感染症:結核 脳炎

 炎症:リンパ球性下垂体炎

続発性(頻度不明)

 薬物性:リチウム シスプラチン

     アミノグリコシド系抗菌薬など

 代謝性:高カルシウム血症

     低カリウム血症

 血管性:急性尿細管壊死

特発性(約40%)

特発性(頻度不明)

家族性(約1-2%)

家族性(頻度不明)

中枢性尿崩症の診断と治療の手引き(平成 22 年度)より一部改編

 

  • 病態生理

尿崩症とは、尿濃縮力が障害され口渇、多飲多尿を示す状態である。ADHはアルギニンバソプレシン(AVP)ともいわれ、視床下部で合成され下垂体後葉に蓄えられる下垂体後葉ホルモンである。ADHは視床下部で産出、下垂体後葉で分泌され、尿細管に作用するホルモンのため、これらの異常をきたす尿崩症は、①中枢性尿崩症(=ホルモンが産出されない)、②腎性尿崩症(=ホルモンが産出されるが標的細胞の異常がある)の2種類に分けられる。その他に多尿をきたし尿崩症との鑑別が必要になる疾患としては原発性多飲(心因性多飲や視床下部障害など)や薬剤や高血糖による浸透圧利尿がある。これらの鑑別は尿所見や検査データや病歴、薬剤歴を聴取することが大事となる。

 

  • 臨床検査、生理機能検査

ADHの基準範囲は安静下の通常水分摂取時に4.2 pg/mL 以下とされる。血漿ADH 濃度は飲水により低下し、脱水で上昇する。すなわち、健常人でも十分な飲水により血漿ADH 濃度は低下し検出できないことがある。このようにADHは体液量と血漿浸透圧の調節を行っているため、血漿ADH 濃度と血漿浸透圧(あるいは血清Na 濃度)との間には正の相関関係が認められる(図1)。つまり血漿浸透圧が上昇すればADH分泌も上昇する。この正の相関関係からの逸脱を血漿ADH 濃度の異常値といい、ADHの評価は、その分泌調節機序をふまえて考えなければならない。

中枢性尿崩症は血漿ADH濃度が血清Na 濃度に対して絶対的(0.3pg/mL 未満)あるいは相対的に低下する。相対的低値とは、血清Na 濃度が148 mEq/L 以上でもADH が基準値にとどまる場合である。5%高張食塩水点滴などの分泌刺激試験を行い、血漿浸透圧を増加させても血漿ADH 値が上昇しないことを確認する。また中枢性尿崩症の原因についても頭部画像を用いて検査する。

腎性尿崩症における血漿ADH 濃度は、あくまで血漿浸透圧との関係では正常の分泌調節範囲内にある。

図1:血清Na値とADHの関係

SIADH

腎性尿崩症

中枢性尿崩症

SIADH:バゾプレシン分泌過剰症

中枢性尿崩症の診断と治療の手引き(平成 22 年度)より一部改編

 

  • 薬物療法とそのターゲット

中枢性尿崩症の治療はデスモプレシンを点鼻もしくは経口投与する。デスモプレシンは、バゾプレシンの1位のシステインが脱アミノ化されるとともに8位のL型アルギニンがD型アルギニンに置き換わった化学合成誘導体である。デスモプレシンの抗利尿効果はバゾプレシンの5~10倍であり、平滑筋収縮作用をほとんど認めない。

腎性尿崩症は水補給や原因疾患の治療で対処する。また腎性尿崩症においては、尿量を減らす目的でサイアザイド系利尿薬を使用することもある。これはサイアザイドが糸球体濾過量を減少させ、近位尿細管での水・電解質の再吸収を促進する作用があるためである。

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